TOPICS 連載.GLOBAL EYES ON DESIGN from America

激変する自動車産業におけるデザインの役割と人材育成~アメリカのデザイン教育最前線

Ford Model Tはその3つが備わった良い例と言えます。ねらい通りに機能(Logic)、人々が想像していなかった馬のいらない車(Magic)、一部の高級車から一般大衆車へ人々の生活を変えた(Music)。また、デザイナーの仕事は役割と機能に分けられます。役割とは将来像をビジュアライズすること ”Envision”であり、機能はデザインシンキングや活動を通じてビジョンを実現すること。役割は不変ですが、機能はテクノロジーやプロセスと共に進化していくでしょう。

Ford Model T

『Logic・Magic・Music』をベースに
Humanityがより重要になる。デザイン教育はどう対応している?


教育面では主に情報収集分析とビジュアライズのスキルをベースとしてきました。それは今でも非常に重要です。ここ15年では”デザインシンキング”を重要視しています。2つの目的があり、1つはデザイナーが本当の意味でのデザインを深く考えること。もう1つはツールとして、デザイナーでない人達がデザインの意味や目的を理解する手助けとなること。その為の”デザインリサーチ”に力を入れています。 良い例として、私の学生の一人、シンシナティ大学の卒業生 Ryan Eder を紹介します。彼は誰もが使い易いフィットネスマシンをデザインしました(詳細:T.D.O.71号_11)。彼はHumanityの価値を常に考え、車椅子ユーザのフィットネスマシンに対するリサーチを徹底的に行いました。そして彼らに限らずあらゆるユーザを対象としたいと考え”インクルーシブデザイン”を適用しました。

すべての人のHumanityを包括しているからこそ、すべての人が使い易い、社会にインパクトを与えるデザインとなっています。いかなるデザインにおいてもエスノグラフィ※1や共感がキーになります。人間、ニーズ、欲求を正しく理解することが最も重要だからです。良いデザイナーはここを大切にします。さらには、人、テクノロジー、ユーザニーズ等、価値あるインパクトを創出するためにそれらを繋げられる能力が必要となります。

※1:行動観察をベースとした潜在ニーズ抽出法

Include Fitness Designed by Ryan Eder