移動する感動のおもてなし空間

移動空間のおもてなしをデザインしている水戸岡氏に聞く

車窓を魅力的なものに変える魔法

ゆふいんの森三世では高い床構造で飽きのこない風景を演出した。ハイデッカー構造と呼ばれる床の高い構造により、高い位置に設けられた車窓から景色を見ることができる。他の列車とは違う飽きのこない風景は旅人たちの心を一層とらえるのに一役買っている。



SL人吉では子どものためにガラス貼りの展望ラウンジをつくり、子ども用の椅子を取り付けた。この場所がこの車両で最も価値のある空間だと思っている。子どもとお年寄りを喜ばせることが、結果的には全体を網羅し、子どもの最初の1ページが良い形で埋まることが公共デザインのベーシックな姿であり、文化の象徴でもあると思っている。

SL人吉の展望ラウンジ
真ん中に子どものための椅子がある。


800系新幹線「つばめ」では背もたれを高くしたスタイルによってプライバシーを適度に守り、旅に安心感を与える。また奥行きの深い座り心地はホテルのラウンジチェアのようなくつろぎを与える。

800系新幹線 「つばめ」
プライバシーを適度に守る背もたれを高くした椅子。

窓が大きければよいとは限らない。実際のところ沿線沿いで絵になる景色は少ない。しかし、子どもの絵でも最高の額縁に入れればそれなりに見えるように、額縁で切り取って見せれば、なんでもない景色もそれなりの景色に見えてくる。電車は速いことにも価値があるが、遅い方が価値があると思っている。遅く走ることにより沿線の景色や街がよく見え