手を加え満足できるシェアリング

多くのシェアスペースを手掛ける成瀬・猪熊設計事務所に聞く

自らが工夫するようになる、
未完成さによって導くおもてなし


使う人が自らアレンジできることが理想的なシェアスペースだという。初めて訪れる空間や、作法が正確に決まっている様な従来型のオフィス空間は、遠慮が相まって行動が萎縮されがち。空間やモノをあえてラフに作ることで、使う人の敷居が下げられ、使用者自らが工夫するような能動性が促される。イベントスペースでは様々なイベントが催されて

おり、可動ステージ(左下写真)が使用できるようになっている。木材の簡素な作りで気軽に動かせそうな見た目から、色々な人が工夫して独自の組み合わせで使っている。多様な使われ方やラフさがある空間は一見、余分で不完全に思われる。しかし、それらが余白的に効果を発揮することで冗長性が生まれ、使う人の能動性も引き出されている。こういった非従来的で固定されていないスタイルが新しさを生み、様々な人に受け入れられる理由の1つにもなっている。

人の心理に、より寄り添う空間

開放的な空間にも課題がある。シェアスペースを作り始めた当初はオープンスペースという言葉を意識して、開放性に重点を置いて設計をしてきた。食事をするときに人目が気に

なったり、他人に聞かれたくない話をしたい場合もある。会議室を使うまでもないが完全にオープンなスペースでは使いづらい、こういった状況に対して、最近は仕切りのあり方を考えたり、働く場所として何が本当に良いのか、さらに深堀りしながら設計を行なっている。今後は、空間を構成するものも含めて、より人に寄り添った設計が必要とされる。

成瀬・猪熊建築設計事務所 成瀬氏(右)、猪熊氏(左)

様々な人が1つの空間やモノを共有する機会が増えている。多様性や未完成な部分を作ることで、使う人の自発性や自身でアレンジできる心地よさを生み出す。こういったアプローチはシェアして使うモビリティーなどにも通じ、今後、おもてなしを考える上でも重要になりそうだ。