文化をつなぎ、心に残す企業イメージ
食文化の魅力を伝え、未来につなげる体験型博物館、MIZKAN MUSEUMに聞く
本物を伝え、文化をつなぐ
MIMの中で一際大きな存在感を示しているのが、江戸時代の酢の運搬船「弁才船」の再現だ。暗い展示室に入ると、プロジェクションマッピングが始まり、徐々に船の姿が見えてきたかと思うと、室内が明転、圧倒的な迫力の巨大な船が現れる。演出はそれだけでない。展示室2階部分では、船の甲板に実際に乗り込むことができ、そこでは酢を運ぶ江戸までの航海を映像と風によって体感できる。

弁才船は、本物の伝わり方に勝るものはない、との考えから、当時の資料から類推して忠実に再現。海運業が古くからこの地域の生業だったという地域文化と、ミツカングループの事業も、当時、握り寿司の原型となる「早ずし」が人気を呼んでいた江戸に酢を運ぶことで発展していったという歴史を、本物の船の再現を駆使しながら、予想のつかない演出を加え、印象深く伝えている。
「大地の蔵」では、江戸時代の酢作りを、実際に使用していた道具をできる限り用いて紹介。

本物の道具たちが歴史を伝えている。
「風の回廊」では、半田の歴史的な写真や山車祭りの法被がモチーフの暖簾を展示。企業ミュージアムながら、地域の文化・歴史をきちんと伝え、地域への愛情を感じさせる。
ミツカングループは「やがて、いのちに変わるもの。」をグループビジョン・スローガンとしている。食に対する思いをMIMを通して発信し、文化を伝えていきたい、と榊原氏は語る。

企業の魅力を楽しみながら理解してもらい、記憶に残すためには、ユーザーとのコミュニケーションの接点をどのように設けるかが重要だ。 伝統的な要素に現代的な見せ方を組み合わせて生まれた美しい展示は、歴史・文化を魅力的に伝えており、デザインの力を感じた。