伝統技術を見なおし、現地のニーズに合わせて革新する有松鳴海絞り

株式会社スズサン 代表取締役 村瀬裕氏・村瀬史博氏:有松鳴海絞りの可能性を世界に発信し続けるために

現地のライフスタイルを汲み取る


日本の伝統技法を用いた産業を海外に進出しようとして浴衣や着物など日本で売れているものを海外にそのまま持っていっても現地のライフスタイルに合わない。汎用的に使ってもらうためには現地のニーズに合わせて変化させなければならない。(株)スズサンはドイツに 「Suzusan e.K.」 を立ち上げ、最新情報やトレンドといったニーズを現地で汲み取り企画・デザインし、製造加工を日本国内(有松)で行うことでスピード感ある商品開発をし、世界に展開している。

「攻めの姿勢」新しい可能性の追求


既成概念を超えるために必要なことは「攻めの姿勢」である。村瀬裕氏は「伝統の革新で絞りをただ守るのではなく、色々な方向から攻める必要がある。」と語る。昔は綿や絹などの天然素材を扱っていたが現在はポリエステルや様々な素材を使った形状固定技術を開発したことで絞りの新たな可能性を見つけている。同じ伝統技法の絞りであっても素材が変わるとまったく新しいものに見え方が変化しているのである。

写真上:絞り作業 写真下:染め後の製品 絞り作業と最終的な製品の仕上がりがイメージできていなければ意匠できない。有松鳴海絞りの職人は高齢化により後継者が少なくなってきている。今後の課題はさらなる認知度向上と若者に絞りの技術伝承をし、新しい絞りの可能性を追求するモノづくりとなる。

有松鳴海絞りに対する熱い想いと革新へチャレンジする姿が大変刺激的であり、心を揺さぶられた。保守的な伝統産業の中で「世界に通じるモノづくり」に向ける攻めの姿勢はモノづくりにおいて必要不可欠な姿であり常に持ち続けなければいけないと感じた。