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第13回 石工職人「穴太衆」

「石の声」を聴き、「石に従う」 

石積みの仕事は設計図がない。技法は口伝えで行われ、13代目の祖父から「石の声」を聴き、「石に従う」事を教わった。事前に作業現場を確認後、採石場へ行き、1〜2日かけて観察し、石の持つ性格を覚えたりして積み方をイメージする。職人の間で語られる「段取り八分・仕事二分」という言葉通り、石を積む前の段取りをしっかり行う事で作業の八割は完了したも同然なのだ。

「経験を積む事で感覚が研ぎ澄まされると、石の主張が分かるようになり、たくさんある石の中から、隙間に合う石を探し出す事が出来る。」と粟田氏は語る。その感覚こそが「石の声」を聴き、「石に従う」という事で石との対話で精度の高い石積みが出来る。

石積みで重要な事は、作業前にしっかりと段取りを行う事だ。我々もモノ作りの業務を行う前の段取り作業で、デザイナーの意図や完成形の イメージを事前に共有したり、以前の業務を振り返る事で、後戻りが無いスムーズな業務が遂行出来る。どんな開発においても、作業前にし っかりと段取りを行う事が、高い精度で思い描いた以上のモノ作りに繋がると改めて実感した。